脈の輪郭は少し硬く細めで、リズムはゆっくりで時々わずかに狂い、脈の位置は沈んでいる。
心療内科・精神科の症状がある患者さんに現れることがある脈で、向精神薬に依存している可能性があり、服用している間に耐性が現れた可能性があります。
そのため薬の摂取量が増え、強い薬を求め量を求め複数の病院を訪ねている可能性があります。
・・・・・・・・・・・・・・・
目の相が弱く少しだけ焦点が前方にずれていて、相手と目が合っているように見えても、目ではなく後頭部寄りに焦点が合っている様子がある。
問診をすると返答がわずかに遅れて返ってくる。
顔にはごく薄い浮腫が広がっている。
鼻閉と口唇の乾きがある。
急にイライラしたり沈んだり、気持ちに不安定な様子がある。
この方の病名はうつ病。
脈診の結果は脾虚肝旺。
脾虚(胃腸が弱い)のため飲食した物から効率良く血を作れず、慢性的に血が不足しているため、その血をエネルギーにしてストレスと対峙する肝の働きが低下している状態です。
血が足りない肝は常にざわざわと落ち着かず、ストレスが加わるとすぐに興奮して働きは乱れ(肝旺)、簡単にストレスに負けてしまいます。
脾虚肝旺の方はストレスに敏感で耐性が低く、うつ症状が現れやすくなります。
ベースに脾虚があるため、薬の良い作用と悪い作用を分別して不用なものを排出する働きが弱いため、薬の副作用が現れやすく依存性も現れやすくなります。
脾虚があると強い意思があったとしても、薬やアルコールなどの悪い作用を強く受けてしまい依存しやすい傾向があります。
また血の不足が進行し血の材料の水も不足すると、ストレスが加わったときに発生する熱をほとんど抑えることができず、その熱は体の上部の呼吸器に充満し、呼吸はひどく乱れパニック障害を引き起こします。
この方の場合、うつ病と強く関係する心や肝に原因を求めて治療を進めても上手くいかないはずで、脾虚による薬の依存性に対する治療を第一に進めることがポイントになり、脾虚の改善は造血が図れるためうつ病の根本治療にもなります
精神科・心療内科の症状をストレスや環境などの体の外側から考えるだけでなく、体の内側から考えることはつらい思いをしている方たちの役に立つはずです。