東洋医学では「内なるものは必ず外に現れる」と考え、体表に現れた変化は体内の異常を映し出したものと捉えています。体表から臓腑・経絡や陰・陽・気・血の様子を探り、病の本質を明らかにします。そのための方法が脈診・腹診・望診です。
手首の動脈に指先を当て、まずは中脈(中ほどの深さにある最も強く触れる脈)を捉え神気(生命力)の虚実を判断します。中脈に問題がある場合は危険な状態と言えるので特に入念な診察が必要です。次に十二の部位の脈差(脈の力の差)を捉え臓腑の虚実を判断します。最後に脈状(脈の性質のことで浮いている・沈んでいる・速い・遅い・強い・弱い・硬い・軟らかいなど数十種類に分類)を捉え、さらに細かく臓腑・経絡や陰・陽・気・血の様子を探ります。
東洋医学の腹診は西洋医学のように臓器の様子を直接探るわけではないので、強く按じるのでなく膝を立てずに足を伸ばして腹の肌をやさしく撫でるように行ないます。腹部の体表には全ての臓腑の様子が現れます。腹全体を診ながら呼吸の動きや虚里の動(心尖拍動)などを観察し神気を捉え、按じながら温冷・動悸・弾力・硬結・圧痛・潤いなどを診て、臓腑・経絡や陰・陽・気・血の様子を探ります。
望診は視診のようなものですがその人の神気(生命力)・臓腑の虚実を察する方法で、眼の輝き・肌の色つや・舌・話す様子・呼吸の様子・姿勢などから判断します。全身を診るわけですが特に顔からの情報が多いので、化粧をして分かりにくい場合は尺膚といって肘の内側の様子から判断することもあります。
治療法
治療は診断結果にもとづいて行ないます。病の本質が分からなくては治療を進めることはできません。はじめに診断結果をもとに配穴を行ないます。配穴とは複数のツボを組み合わせることで、症状により様々な配穴法を用います。その配穴に対して補法(不足を補う)・瀉法(過剰を取り除く)を行なうことが治療です。当院ではμA電流とテイ鍼を中心に治療を行ないます。
・正経奇経μA治療
症状によりμA(マイクロアンペア)の周波数・波形・極性・時間・電流量を変化させて経穴に通電し、正経・奇経の働きをコントロールします。一般の電気治療で使う電流の1/100程度ですから非常にやさしい感じの治療法です。
・テイ鍼治療
この治療に用いる道具はテイ鍼(ていしん)と呼ばれる刺さない鍼です。テイ鍼は本治法に最適で経穴に接触させ臓腑の働きをコントロールします。テイ鍼は金・銀・銅・亜鉛・チタンなどの金属製で、臓腑の虚実により材質を使い分け、脈状によって鍼の形状を使い分け、さらに補法と瀉法で経穴への鍼の当て方も変えます。