横になってばかりのうつ病

外出することができないと聞き往診に伺った。

診察を始めてすぐに「チョット休ませて下さい。」とベッドに横になる。

部屋はとても暑い。

顔色は白いが唇は暗い色をしている。

上まぶたはむくみ力無く下垂し、目の輪郭はぼんやりしている。

全体に浮腫があり膝から下のむくみも目立つ。

陽虚のようすだ。

「うつ病と診断され薬を飲んでいますが、だるくて一日中横になっています。がんばって動こうとするんですが、その後がひどく疲れます。この三年は病院以外に外出していません。」

「気分はどうですか?」

「いろいろなことが気になってしまって、すぐにどうすればいいのだろうと不安になってしまい、そのうちに無力感に襲われます。」

「冷えを感じますか?」

「はい、とても冷えます。暖めても冷えを感じます。暖かい季節は多少良いですが、冬は身体も気持ちも調子悪いです。調子がとても悪いときは、お医者さんにこちらからお願いして入院させてもらっています。」

脈は深く沈み遅い。

身体が芯まで冷え血がうまく流れないため、血オ(血行不良)が発生している。

脈診の結果は心腎陽虚証。

心(心臓)は腎(腎臓)を温める。しかし心が弱いと腎は温まらず、水分代謝が低下し浮腫が起きる。

また陽(暖)が不足しているため、強い冷えを感じ、冷えのため血が巡らず唇や爪が暗色になる。

「たまに胸に何とも言えない違和感を感じます。心臓の検査では問題ないと言われました。」

冷え・血オ・浮腫によるもので、心臓の働きが弱くなっている。

今は良くてもいずれ心臓に大きな病名が付くか、突然の発作が起こる。

心(しん)は精神を管理するので、弱れば精神は疲労し臆病になり無力感に襲われ、うつ病と診断される。

冷え・血オ・浮腫はどれも倦怠感を生み、三つも重なればほとんど活動できなくなる。

「私の病気は良くならないのでしょうか?私はこの先どうなるのでしょうか・・・。」

体の問題が根本にあってそのために精神の不調が起こっているので、精神を一番に考えて薬の服用やカウンセリングを行なっても東洋医学上は治らない。

薬やカウンセリングで気持ちが前向きになっても、倦怠感や冷えはどうしようもなく、すぐに無力感が現れ、暖かい部屋で横になる生活をしてしまう。

この生活がさらに症状を悪化させ抜け出せなくなり、これ以上ない無力感に襲われる。

おそらく医師やカウンセラーをひどく悩ませる症状だろう。

「治療は心と腎を温め、冷えを除き、むくみを散らします。」

冷えとむくみを基準にして治療を進めることが大切で、冷えとむくみからその時の精神状態が把握できる。

「冷えとむくみが落ち着いてくると、だるさや眠気がなくなり、気持ちがしっかりしてきますよ。」

症状が深刻になってから時間が経っている。

私の所のような小さな治療院にすぐに来院される方は少ないが、それも承知している。

いつものように養生法を説明し、丁寧に丁寧に治療を進める。