この方は七人の実在しない人と、いつも一緒にいていつも話をしています。
話し方は静かですが、怖がったり悲しんだり穏やかだったりします。
その七人には、ひどいことを言ったり恐ろしいことを言って苦しめる人がいて、相談に乗ってもらえる相手がいて、また悩みを聞いてあげたり励ましてあげる相手がいるそうです。
私がこの方に話しかけると、「ちょっと待ってくださいね。」と、七人の人たちとの話が終わってから私と話しをしてくれます。
隣に座ってこの方と七人の人たちとの話を聞いていると、間違いなくそこには七人の人たちがいて、私は八人目です。
病院での診断は統合失調症。
脈診の結果は、癲狂。
癲狂の中でも、痰気鬱結による癲証の様子が強く現れています。
癲狂は、癲証と狂証に分かれます。
癲証は、精神抑鬱・表情が乏しい・物静か・意識混濁・理解できないことを話す・独り言・不安感・不眠・記憶力の低下・判断力の低下などが中心で、おおよそは静かな様子です。
狂証は、常軌を逸した言動・いい加減なことを言う・泣いたり笑ったり激しい感情が現れる・人を強く罵る・叫ぶ・物を壊す・暴力を働く・興奮して全く寝ないなどが現れ、荒く分別のない様子が現れます。
統合失調症の陽性症状と東洋医学の狂証、統合失調症の陰性症状と東洋医学の癲証は似ているようですが、統合失調症では幻覚が陽性症状として現れるのに対し、東洋医学では狂証でも癲証でも幻覚は現れるので完全には一致しません。
ストレス・消化能力の低下・食べ過ぎ・飲酒・運動不足・睡眠不足・多湿などで体内に痰(不要で使えない水分)が発生すると、狂証でも癲証でも幻覚が現れるという特徴があります。
しかし幻覚に悩まされている方の中には、西洋医学と東洋医学の完全に一致しないところから原因が見つかることがあり、そこから回復へ繋がることがあります。
癲狂は、癲証が極まると狂証が現れ、狂証が極まると癲証が現れるのも特徴で、症状の動きの中からどこに根本原因があるのかを見極めなければなりません。
また生まれもった心身の質との関係もあるため、細かな診断が必要です。
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この方の痰気鬱結の背景には、心脾両虚が隠れています。
幻覚(幻聴)を発生させる原因が痰気鬱結で、痰気鬱結を発生させる原因が心脾両虚です。
この方の痰気鬱結を治すには、心脾両虚を同時に治療する必要があります。
この方の心脾両虚は生まれ持った体質であるため、人生のどこかで幻覚(幻聴)を発症する可能性があったと言えます。
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「睡眠の様子はいかがですか?」
「ちょっと待っててください。こちらの話が終わってからお話ししますね。」
「はい。」
正確な診断をして治療を進めると、家族との落ち着いた生活を取り戻せたり、疎遠になった友人と再びお付き合いが始まったり、新しい仲間ができるはずです。