息が吸いにくい症状と心療内科

「呼吸が浅く息苦しいです。息が吸いにくいです。肺や鼻・心臓・甲状腺などいろいろ検査してもらいましたが、問題は見つかりませんでした。」

顔色に赤みが入っている。

「心療内科にも行きましたが、過換気症候群やパニック障害といわれ、診てもらうところで少し説明が違いました。薬は眠気がでたので、漢方薬に変えてもらいましたが、今のところ良い変化はありません。」

唇は乾燥ぎみだ。

「口が乾いて、冷たいものがほしくなります。」

まばたきが多い。

「目が乾きショボショボします。」

「眠れますか?」

「あまり眠れません。」

「寝汗は?」

「よく出ます。」

「めまいはどうですか?」

「します。」

「足腰の痛みやだるさはありませんか?」

「下半身がだるいです。」

「胸の下の肋骨あたりに違和感はありませんか?」

「ここですか?押されるような張るような感じがずっとしています。念のため肝臓と胆のうも見てもらいましたが、問題はなく原因は分からないと言われました。」

脈は細く速くほんの少し軟らかい。

肝と腎の陰虚(水と血の不足)が同時に現れている。

「症状が現れる以前の生活はどうでしたか?」

「忙しかったです。仕事が忙しく夜も遅くて疲れていました。好きな仕事で楽しかったのですが、どうにも続けられなくなって・・・。」

この方の場合、過労と睡眠不足のために先に腎陰虚が現れ、その影響が肝に及び肝腎陰虚を起こしている。

腎はとくに息を深く吸うときに関与するので、弱ればしっかり吸えない。

肝が弱れば胸や脇が張るので、胸郭が拡がりにくくなり、息を吸いにくい。

また陰虚は虚熱を発生させる。

虚熱が胸にこもると、息を吸い込もうとするのを邪魔する。

さらに肝陰虚は肝気鬱結の原因になるので、また胸と脇に張りが現れ、精神抑鬱症状も現れる。

陰虚単独でも感情がたかぶったり怒りやすくなるので、ここだけで判断すると、心療内科の病名がついてしまう。

しかしもともとの原因は精神的なものではなく疲労である。

だから精神の治療をしても、東洋医学上は対症療法になるだけだ。

実際に行なわなければならないのは、水と血を増やすことだ。

せっかくの漢方薬も、水と血を第一には考えていない。

脈を診ずに、症状だけで処方するとこうなる。

「懸命に働いて本当に疲れてしまったのが原因で、まだ疲れがとれていないということです。疲れ(陰虚)がなくなれば良くなりますよ。」

治療は肝と腎の水と血を補う。

腎が良くなれば深く息を吸えるようになる。

肝が良くなれば胸脇の動きが柔軟になり、楽に息を吸える。

水と血が増えれば虚熱が消える。

この治療は呼吸をしっかりさせるために行なうのであり、精神を考えた方法ではないが、これで良い。

他にも検査で問題がないので心療内科を紹介された方を診ているが、精神に問題のないことが意外と多い。

その場合はこの方のように長く苦しむことになる。