事故で皮膚・組織が欠損し動かない膝(外傷性瘢痕拘縮)

車にはねられ倒れたところをひかれ、肺挫傷・高エネルギー外傷・肋骨骨折・裂挫傷・挫創・挫滅創などの病名がついている。

「肺挫傷と肋骨骨折は良くなりましたが胸の痛みは残っています。他の痛みも残っていますが、膝の痛みとつっぱり感が強くてうまく動かせません。それで育児ができなくて困っています・・・。」

膝は少ししか曲がらない・平らな所は杖を突くとフラフラしながらようやく歩けるが、階段は危なくて使えない・椅子から立ったり座ったりがうまくできない・床から立ち上がることが一人では難しい・床や布団などに接触した時の膝の痛みが強いなど、日常生活も育児も難しい状態だ。

左右の膝には外傷性瘢痕拘縮と組織欠損がありうまく動かせない。

患部はえぐれて引きつれている。動かせないので筋肉は少し衰えている。若いお母さんだが杖なしでは歩けず、その姿は非常に不安定で何度も転倒しているそうだ。

整形外科では治療が長期になっているので症状固定とし治療を終了する予定で、 形成外科では手術は行わずこちらも治療を終了すると言われている。

「今のままでは日常生活はままならず、育児ができません。もう一人子供がほしいのですが、今の状態ではどうしたらよいか・・・。」

脈診の結果は血瘀で気虚を伴っている。

血瘀にはいくつかの種類があり、この方は漏れ出た血が消えずに患部に残ったため発生した。気虚もあるため新しい血が患部に到達せず外傷性瘢痕拘縮を発症した。

「漏れ出た血が患部に残って組織を硬くしています。さらに体質として気虚があるため患部に新しい血が流れず柔らかさを取り戻せない状態です。」

この状態で関節の曲げ伸ばしをしても硬く痛いだけでリハビリは進まない。

瘀血(残った血)を散らし、同時に気虚を改善し新しい血を呼び寄せる。

この方の場合、気虚の治療を加えるか加えないかで結果に大きな差が出る。

「血が動き始めると膝は動き始めます。それまでは無理に動かそうとせずゆっくり生活してください。」

ゆっくり立ち上がりゆっくり座る、ゆっくり歩きゆっくり止まる。血が動けば患部に柔らかさを感じるようになり、力強さとスムーズさが増してゆく。血が動けば日常の動きが最良のリハビリになる。

「育児のほとんどを夫や母に任せていて、少し焦っていました。動かない理由が分かりやるべきことも分かったので、落ち着いてもう一度頑張ってみます。」

「膝の動きが良くなれば下半身が安定して、お子さんをしっかり抱くことができます。抱くときもそっと抱いてそっと寝かせて、順番に慣らしていってください。」

外傷は症状の強弱に関係なく受傷後に必ず血瘀が発生する。 この血瘀が後遺症を生み出すのだ。