外出後、自宅に戻ったところで、激しいめまいに襲われ救急車で運ばれた。
その後、検査を行なっても原因が分からず1年以上経過した。
その間に何度もめまいに襲われ、車の運転もできなくなり一人では外出できなくなる。
「どこで診てもらっても、原因が分からないと言われます。原因不明というのは本当に不安で・・・。」
脈診の結果は、痰濁。
頭(脳)へ上がろうとする栄養を、痰濁(消化できなかった飲食の残り)が包み込み、上がるのを遮る。
このため脳は滋養されず、めまいを起こす。
痰濁によるめまいが原因不明と言われることが多い理由は、痰濁を作り出す原因が脾(胃腸)にあるためだ。
めまいで胃腸の様子を診ることはあまりないはず。
原因が分からないまま治療が続くと、症状はなかなか改善されない。
めまいと同時に、眠気・だるさ・吐き気・食欲不振・腹が脹る・胸が苦しいなども現れる。
「眠気やだるさは、周りには理解してもらえなくて・・・。」
痰濁が長く身体に残ると、またストレスが加わると、痰火(痰濁に火の性質が加わる)になる。
痰火は上昇性があり、最上部に位置する脳に入り込むと脳の機能を乱し、激しいめまいを引き起こし意識も混乱する。
痰火上擾である。
「その時に私は救急車で運ばれたんですね。」
治療は胃腸の働きを健全にし、痰濁・痰火を発生させないようにすることを中心に進める。
この方はストレスによる火が現れていたため、そちらも併せて治療する。
症状はめまいだが、養生は飲食が最も大切になる。
「油ものは控えめに、特に甘い物は控えめにしましょうね。それと今はお酒を口にしないようにして下さい。」
このような飲食は痰濁になりやすく、身体にしつこく残る。
そして取り除きにくい。
この方のめまいや眠気・だるさは、周りに理解されないとてもつらい症状であるが、治療と養生を平行して行なえば良くなる。