めまいと脱肛とアトピー

「全体に肌が乾燥し、指の関節のあかぎれのような傷口がなかなか塞がりません。」

傷口は淡色で所々に色の薄い膨疹もある。

脈診の結果は、脾気虚(胃腸が弱い)のため飲食物から十分な気と血を作れていない状態。

このために肌を養えず乾燥と裂けた傷ができ、血が少ないので傷も膨疹も淡色になる。

「子供のときから胃腸が弱く食べる量も少なく食事の時間も掛かります。胃腸が弱いとアトピーになると聞いているので食べ物には気を付けています。和食中心にして添加物や農薬にも気を付けてアトピー対策をしていますが、あまり変わりません。」

この方はもともと脾が虚弱なため、良いものを食べてもしっかり消化吸収できず栄養を作れないため、生後間もなくアトピー性皮膚炎を発症している。

この場合飲食に気を付けても肌の様子はあまり変わらない。

「めまいはしますか?」

「以前からあります。」

脾は上に持ち上げる働きがあるので、脾が弱ければ上部の頭に栄養(気・血)を運べずめまいが起こる。

ようやく運んでも、少ない栄養ではやはりめまいが起こる。

「お尻に問題はありませんか?」

「実は脱肛があって毎日のおトイレで困っています。病院で診てもらおうと思っているのですが・・・。」

脾気虚から進んで脾気下陥になっている。

脾には臓腑を適当な位置に持ち上げ維持する働きもあるので、弱ければ臓腑は下垂し胃下垂・子宮脱・遊走腎・脱肛などが起こる。

この方のめまいと脱肛とアトピー性皮膚炎はそれぞれ別の問題のようだが、どれも根本に脾の問題があるので脾の治療を第一にする。

飲食を受け入れる脾の働きを強くすること第一にして、良いものを口にすることを第二にする。

特に言われなかったがこの脈では精神疲労や不安感があるはずで、この点も考慮して治療を行う。

同じ脾の問題でも様々な症状が現れるし、同じ症状でも関係する臓腑が違うことがある。