脈の去来が速く太く強い。
痰熱による不眠である。
「学生時代からの不眠で20年以上続いています。医師からは必ずどこかで眠っているから落ち着いて考えてと言われています。でも週に全く眠れない日が何日もあって、本当に寝られないんです。仕事もプライベートもどうにもならないんです。」
この方は脾気虚(胃腸の働きが弱い)がもとにあるため、飲食しても消化しきれないものが痰(未消化物)として残り、痰が長く溜まっていたため熱を帯び、飲食の内容やストレスなどで更に熱が加わり痰熱となった。
痰熱は上昇する性質があるため、最上部の頭に溜まり脳を沸騰させる。
そのため脳は異常に興奮し覚醒する。
そして最も眠れないタイプの不眠症になる。
この方の言う通り全く眠れなくなるのだ。
痰熱による不眠はどこかで眠っているからということはない。
治療は痰と熱を取り除くのだが、熱は治まりやすいが痰はしつこく残り治療に時間がかかる。
「脈からすると甘いものがお好きなはずですが、いかがですか?」
「良くないと分かっていますが、つい口にしてしまいます。」
脾気虚(胃腸の働きが弱い)があると甘いものを好み、その甘いものがさらに脾気虚を強くし、痰(未消化物)を大量に作り出してしまう。
この方の痰熱はここから始まっている。
このため胃腸の働きを強くすることが根本治療になる。
「甘いものを止めると不眠が治るということですか?」
正確には甘いものを欲しがらない胃腸にすることが、この方の不眠の根本治療になる。
この方は人生の半分以上を不眠と戦っていて、精神も病んでいる。
心身ともに限界がきている。