「娘はコロナ後遺症と診断されました。筋力低下と倦怠感で、日常生活や移動に杖や人の助けが必要になって、出掛けた先で車いすを借りることもあります・・・」
隣で心配そうにしているお母さんが、病状の説明をしてくれました。
脈診の結果は、肺熱傷津。
肺熱傷津による痿証です。
コロナ感染症で肺を焼かれた(肺熱)ため、肺に存在する津液(生命活動や身体の修復に必要な滋養のある水分)が蒸発(傷津)し、津液の供給を絶たれた筋肉が衰え筋力が低下(痿証)したという状態です。
治療は残存する肺の熱を散らし、同時に津液を増やしその津液をもって消防車のようにさらに肺の熱を冷まします。
また増やした津液で肺に潤いを持たせ、臓器の最上位に位置する肺から全身に津液を降り注ぎ、筋肉に巡らせ滋養し力を回復させます。
もうひとつ脈から捉えられることは、肺胃津傷です。
肺胃津傷は、肺だけでなく胃の津液も失っている状態です。
胃津傷になると消化能力が低下し食事量も減少するため、回復に必要な津液を消化器から作り出せなくなります。
「お腹が減る感じは少しありますが、食べるとすぐにお腹いっぱいになってしまい、以前のようには食べられなくなりました。」
胃津傷の典型的な症状で、おいしく一人前食べられるようにして常に適量の津液を作り出せるようにすることは、この方の治療で大切なことのひとつです。
感染症から筋力低下が起こることは、東洋医学上は稀なことではありません。