「倦怠感が強くてずっと横になっています。声を出すのも大変で、小さな声しか出ないし、話をするととても疲れるので、あまり話さなくなりました。」
とても小さな声で話した後、すぐに目を閉じる。
脈診の結果は、肺熱傷津。
痿証だ。
「こちらからお話ししますので、目を閉じたままうなずくだけで結構です。」
小さくうなずいてくれた。
コロナに感染して半年経っているが、疲労感・倦怠感が強く、仕事に復帰できない状況が続いている。
「どうにか動いてみると、その後の疲労感・倦怠感はひどくなりますか?」
こくっとうなずく。
「胸やのどに熱のような違和感を感じますか?」
こくっ。
「息苦しいですか?」
こくっ。
「薄い痰が絡みますか?」
こくっ。
「まだ微熱が出ることがありますか?」
こくっ。
「口が渇きますか?」
こくっ。
「感染後、食べる量が減りましたか?」
こくっ。
「眠れませんか?」
こくっ。
「気力の低下がありますか?」
こくっ。
「物忘れをしますか?」
こくっ。
「不安感でどうにもならない時がありますか?」
こくっ。
「下半身でしっかり踏ん張ることができませんか?」
こくっ。
戻気による温疫のために現れた、痿証だ。
コロナウイルス(戻気)による、感染症(温疫)のために現れた、筋が弛緩しだるく無力となり、ひどいと萎縮・麻痺する病(痿証)だ。
肺熱傷津による痿証のことで、コロナウイルスにより肺を焼かれたため水を失い、その水に養われていた筋肉は衰えていく。
「今伺ったことは、全て水の消耗・減少で説明ができます。失った水を少しずつ、また確実に増やしていきましょう。」
痿証は進行すると、重症筋無力症・筋ジストロフィー・筋萎縮性側索硬化症などにつながる。
すでに半年が経過しているが、まだ喉から肺にかけて、弱い熱が残っている。
水が少ない状態が続いたため、熱を完全に抑えられていないのだ。
とても苦しかっただろう。
痿証にはいくつか種類があるが、特にこの方のように、肺熱から現れた痿証は進行が速いことがあり、非常に危険だ。
温疫から痿証。
珍しい例ではないが、治療を急ぐ必要がある。
コロナ後遺症と診断された方の一部は、他のウイルス感染の後遺症より、強力な症状を起こしている。
一部とは、もともと水と血が少ない人で、女性が多い。
私の診た範囲であるが、疲労感・倦怠感は女性に多い。
感染症(温疫)はいつの時代も人々を苦しめ、ウイルス(戻気)の種類が異なれば現れる症状は異なり、感染した人の身体の質により現れる症状は異なる。
新型であるコロナウイルス感染の後遺症の様子は、毎回毎回、脈を取り、訴えを聞き、苦しむ方たちの様子を捉えていく。
新型である以上、そうしなければならない。