脈診の結果は肝経湿熱。
「胸にもアトピーができていませんか?」
「言いにくいのですが、乳首にもアトピーがあってなかなか治らず困っています。場所が場所だけにステロイドは使いたくありません。下着にこすれると痒くて痒くて、ジュクジュクして黄色い液が出てくるし何とかなりませんか?」
「オリモノが多くないですか?」
「ええ、オリモノと痒みで婦人科の先生に診てもらっていますが、アトピーと関係がありますか?」
この方は、飲食の不摂生による湿(未消化物)とストレスによる熱が重なって湿熱が発生している。
湿熱は肝経に入りやすく、乳首と陰部は肝経のライン上にあるため湿熱が溜まりやすい。目の周りも肝と関係するので湿熱の影響を受ける。
肝経湿熱は乳首や陰部や目の周りなど、それぞれ関連がないような部位にアトピー性皮膚炎やただれ・痒みを起こす。
また湿熱は体表に現れたり体内に入り込んだり身体の上部に上ったり下部に流れ込んだり、誠にやっかいなもので難治となり長期化しやすい。
「私の症状にそんな関係があるのですか。違うものと思っていました。はじめて聞いたことばかりですが、一体どうすればいいですか?」
飲食による湿もストレスによる熱も、必要な養生法は身体を動かして適度な汗をかくことである。運動不足は肝経湿熱の大敵だ。
しかしお風呂やサウナで汗をかいても効果は少ない。身体を動かして汗をかくことがポイントになる。
汗は痒みを強くすることがあるが、常に患部を清潔に保ち運動を続けると肝経湿熱は消えまた現れにくい身体になる。
難治なアトピー性皮膚炎に対し運動をしなさいとはバカバカしいと思われるが、診断が正しければ正しい養生法を選択できる。治療も同様だ。
もともと養生法に難しいものはないので、選択が正しければ簡単なことで肌は落ち着いていく。
肌のために無理をしながら水を毎日2リットル飲んでいたので、これはやめてもらった。このような摂り方では、水分は身体に吸収されず湿になるだけだ。
肌によいと思い果物もたくさん食べていたが、過ぎれば全て湿になる。この他にも気になるところがあったのでひとつずつ説明をした。
「全く運動をしていなかったので、会社の行き帰りは自転車にします。温かい緑茶を少しずつ飲むようにして、果物と甘いものは控えめにします。でも甘いものはチョット難しいかな。」
「養生は治療と同じくらい大切です。無理せず始めてください。」
東洋医学の考え方で病を説明するとどうしても分かりにくいが、比べて養生法は簡単なものばかりなので「それだけでいいの?」と思われることが多い。
この方は胸のことで長く悩んでいるが、この頼りない養生法を続けてもらえば肌は良くなり元気になってくれるはずだ。