粗食のアトピーの患者さん

「退院後もずっと粗食を続けるよう言われ、肉は極力避け魚は時々にしてきました。悪化はしませんでしたが良くもなりませんでした。」

激しい症状はないが、顔・首・肘・膝は薄く赤みを帯びて乾燥し所々デコボコして、上半身は赤みが強めで下半身は弱い。

血が不足し血の材料の水も少ない状態だ。

患部には面状のかさぶたが並ぶ。

「このかさぶたを搔くと滲出液がにじむことがあります。」

消化できなかった食べ物が身体の表面にむくみとなって溜まっている状態で、このむくみが肌の表面に現れると滲出液になり、長くアトピー性皮膚炎を患っている方に見られる。

脈を診ると、脾(胃腸)が弱いために適量の血が作られず、血が足りないので肌は乾燥し、水も足りないので熱(オーバーヒート)が現れ上半身を中心に肌は赤くなる。

また脾(胃腸)が弱いために消化できなかったものは、不要な水となって溜まり滲出液に変わる。

この方のように食事を控えめにすれば症状が落ち着いていくことがあるが、良くなってもこの方の状態までが多く、乾燥や色素沈着が残ったり潤いがないことがとても多い。

この方のアトピー性皮膚炎は脾(胃腸)の働きが弱いことが根本にあるため、飲食する物だけではなく飲食を受け入れる体側に注目する必要がある。

飲食を制限し血が少ないまま年を重ねると、年齢的な問題から発生する陰虚と重なり簡単に陰虚風燥や陰虚燥熱になり極めて治りにくいアトピー性皮膚炎に進行し、糖尿病や膠原病や間質性肺炎などの難治性の症状が現れる可能性がある。

この方の生涯を考えると、飲食の制限ではなく飲食したものをしっかり消化吸収して血や水を作り、その血と水をもってアトピー性皮膚炎を良くし、さらに将来起きる可能性のあるの難病を防ぐことが重要になる。

このことは本当の意味の「未病を治す」ということになる。

経過が悪いと悪化を恐れてさらに控えめの食事にすると、乾燥を主とするアトピー性皮膚炎の中で最も強い陰虚風燥によるアトピー性皮膚炎が現れる。

陰虚風燥にはなってはいけないし、本当につらい症状が現れる。

「胃腸(脾)を第一に考えて治療を行ないます。胃腸がしっかりすると血が増え、肌は少しずつ変わっていく可能性があります。」

脾の養生と良い血になる食事も説明する。

「食べてはいけないとずっと思っていたし、多めに食べたりいつもと違うものを食べると、すぐに悪化してしまうので食事が怖かったです。でも自分の肌に起きているが分かって、少し気持ちが楽になりました。」

アトピー性皮膚炎の情報は多い。

自分のアトピー性皮膚炎が今どのような状態で

何が原因で発症しているか分かっていない人も多い。

この方も何度も入院をしているが

自分のアトピー性皮膚炎のことを

診断してもらっていない。

その人のアトピー・その時のアトピーを

しっかり見極めながら治療を進めるのが東洋医学である。

そして今後どのようになっていくかも分かる。

見極める(診断)ことが患者さんの役に立つ。

見極めなければ患者さんに迷惑をかける。

アトピー性皮膚炎はひとつではないのだ。