心身症とアトピー

「アトピー性皮膚炎は心身症と考えられるが、君はどう思いますか?」  

少し前のことだが、ある医師から質問された。  

「東洋医学からみてもそう考えてよいアトピー性皮膚炎はありますが、心理面が原因になったり症状を悪化させるとしても、その背景には必ず臓腑の変調が隠れています。」

「また臓腑の話ですか。その話はどうしても分からないよ。」

「ストレスによって症状が悪化することは確かに多いです。でもそれはストレスが原因ではなく、ストレスに耐えられない臓腑に問題があると考えます。」

あきれられたが東洋医学とはそういうものである。

心理面の問題は臓腑に影響し、臓腑の問題は心理面に影響するというのが東洋医学の基本で、その本質は臓腑がしっかりしていれば精神もしっかりしているということである。

臓腑の問題が根本にある状態で心身症と診断され、心理療法や心理カウンセリングを行っても良い結果にはつながらないだろう。

心理療法のなかでつらいことを思い出させたり考えさせたりすることがあるようで、臓腑の様子が回復してきているのであれば効果があるはずだが、臓腑の弱っている方には負担になる。

臓腑に変調があると、健全な臓腑なら問題が起きないはずのわずかなストレスでも心理面の動揺は激しく、その動揺が臓腑の変調をさらに進行させ、病を生んだり症状を悪化させる。

この患者さんのアトピー性皮膚炎は血オが原因で、血オの原因は気滞で、気が滞る原因はストレス。

肝はストレスに正面から向きあう臓腑で、また気を巡らせる役割があり、肝に変調があると容易にストレスに負けてしまい、気の流れが滞り血オが生まれる。

すると肌は黒く肥厚し、表面は乾燥しはがれるタイプのアトピー性皮膚炎になる。

「ストレスがあっても安定して気を巡らせる肝にするために治療を行います。肝がしっかりすれば血は流れ、黒い肥厚は消え肌は潤います。」

「はい。」

「肝がしっかりするということはキモが据わるということで、少々のことでは動じなくなります。」

二十歳過ぎの若い女性に、キモが据わるというのは似合わないかもしれないが、この方の月経前症候群の症状も良くなる。

キモが据わるということは病だけでなく、生きていく上で力になるはずだ。

生死や事件に関わるような強大なストレスの場合でも、東洋医学のこの考え方は患者さんの役に立つことができる。