身体の広範囲が乾燥して皮膚が細かくはがれ、薄い赤色のかさぶたが点在している。
血が不足して肌を滋養できない血虚のアトピー性皮膚炎でみられる様子だが、背はまるく全体にむくみがあり、アトピー性皮膚炎のない部分はとても白く透き通っている。
「痒くて、だるくて、息切れがするし、気力がでません。軟便で時々下痢をします。花粉症もあります。病院で漢方薬をもらっていますが変化がありません。たまに目の周りにヘルペスができて、水疱が破れてベタベタになります。アトピー以外にもいろいろあるんです。」
と、話すと小さく湿った咳をする。
「風邪ではないのですがよく咳が出ます。」
脈診の結果は脾肺気虚。
血虚が原因ではない。
脾は飲食物から有益な水を作り出し、肺はその水を全身に巡らせる。その水で肌は潤いみずみずしさが保たれる。
西洋医学では脾は消化器、肺は呼吸器であるが、東洋医学ではともに水の循環に欠かせない。
この二臓が弱ると肌は乾燥しザラつきはがれる。
透き通るような白さのむくんだ肌・猫背・だるさ・息切れ・気力の低下・花粉症・軟便・痛みの少ないヘルペス・痰のからむ湿った咳は、脾と肺の力不足のために起こっている。
脾肺気虚のアトピー性皮膚炎は肌の様子から血虚と診断され、この方のように血を養う治療を行うことが多い。
しかしこの方は脾肺気虚証である。脾と肺の乏しい気を充実させることが根本治療で、気が充実すると水が作られ水が巡り肌は潤いきれいになる。
「飲食の不摂生はいけませんよ。冷たい風に当たるのもよくありません。一番いけないのは、座ったまま動かずおやつを食べて空腹の時間を作らないことです。」
心当たりがあるようだ。
「湿った咳がなくなるころには肌も落ち着き元気になりますよ。」
全ては関連している。患部だけを診てはいけない。脈は心身の変化を正確に教えてくれる。