少し歩くだけで猛烈な痒みに襲われるアトピー

「用事を済まそうと外出すると、ほんの少し歩くだけですごく痒くなります。」

顔はとても赤い。

赤い中に強い黒が混じり、大小の深いシワが刻まれている。

落屑は無い。

「もともと痩せていましたがこの数年でさらに痩せてしまい、すぐに疲れるようになりました。これ以上アトピーで家族に迷惑を掛けられないので、なんとか仕事を頑張っていますが・・・。」 

医師から処方された熱を取る漢方薬を長く服用し、農薬・添加物・薬を徹底して避けるよう指導されている。

脈を診ると、気陰両虚のため燥熱が現れている。

この方はもともと血と水が少ない陰虚体質のところに、アトピー性皮膚炎の長患いと熱を取る漢方薬で腹の温度が下がってしまったため、気陰両虚となり激しい燥熱で苦しんでいる。

「五年間漢方薬を飲んでいますが、私のお肌はどうにかなりませんかね?」

半分諦めているのだろう。

「いい漢方薬のようで、結構高いんですけどね。」

今の状態では飲食物から血と水を作り出せないため肌は滋養されず乾燥し、血と水が足りなくては化熱・化火(激しいオーバーヒート)し、肌に熱を持つ。

熱はさらに血と水を消耗し、火のごとく熱は激しくなる。

乾燥と熱(オーバーヒート)が極まった燥熱である。

そして血と水は枯渇し痩せこける。

アトピー性皮膚炎では絶対になってはいけない状態だ。

そしてわずかな血と水は流れることができず、淀み、オ血を作る。

赤みに黒が混じるのはこのオ血のためだ。

温かい胃腸で血と水を作り、燥熱を治していくことが治療の柱になる。

熱の原因を診断せず強引に肌の熱を冷まそうとしたため、この方は苦しんでいる。

強引な方法を行なったため燥熱が極まり、数分歩くだけで顔はひどく赤くなり激しい痒みに襲われる。

実際に来院された時も、顔がひどく赤く顔を搔きむしっていた。

搔いても落屑も出血も無い。

血と水が枯渇し何も出ないのだ。

動けば誰でも体温は上がるが、上がりすぎないように自らの血と水で体温を下げる。

この普通のことがこの方は全くできないのだ。

そして要の血と水を冷えきった腹ではどうにも造れない。

こんな小さな治療院に来院される方の多くは、どのような病でも極まった状態になっている。

この方の治療は、血と血の材料の水を増やすようにする。

血と水でアトピー性皮膚炎を良くする。

まずは冷え切った腹を温め働きをしっかりさせる。

「ようやく自分の身体に起こっていることが理解できました。」

「しばらくはお腹の様子に合わせて、食材や調理法を考えていきましょう。お腹が元気になってきたらいろいろ食べられますよ。」

「はい。」

「少し体重が増えるとお肌にいい変化が現れます。」

「この痩せた体型も悩みだったんです。」

この方の状態だと時間は掛かるが、必ず良い方向へ向かう。