カーテンを開けて治療室に入ってきたのは、大きめのメガネをかけ前髪を下ろした若い女性だ。
「上半身を中心にアトピーがあって、特に顔の滲出液がひどいです。何年もひどくなったり落ち着いたりを繰り返して、元気もなくなってとても心配です。」
と、心配そうな顔でお母さんが説明してくれた。
顔にできるアトピー性皮膚炎は、本当につらい。
少し前に会社を辞められたそうだ。
メガネをはずした顔は、目の周りと頬を中心に滲出液を伴う赤い湿疹がひどく、目も腫れて大きく開けられない。
ベタベタしているが赤く乾燥したところもある。火熱がある。
脈を診ると、去来が滑らかで太く速い。
上腹部は動悸が強く、盛り上がっている。
火熱のために湿(滲出液)が身体の上部に上昇し、顔であふれ出ている状態だ。
治療は、火熱を冷ましながら、滞った気血を巡らせ火熱の再発を防ぐ。
同時に湿を除去する。
この方の火熱に対する養生法はいくつかあるが、次の三つに絞り説明をする。
・甘いもの・果物を控えめにする。(湿をためない。)
・夜更かしを避ける。(血が薄く少なくなるのを防ぎ、熱の上昇を防ぐ。)
・出来るだけ歩く。(たまった湿と熱を発散する。)
夜遅くまでスマホを見ながらおやつを食べてはいけないと言うと、フフッと少し笑った。
どうも毎日やっているらしい。
治療を終えると、顔の赤みが和らぎ目も開くようになった。
お母さんも、ほっとしたようだ。