たくさんの水を飲むアトピーの患者さん

「水を毎日2リットル以上飲んでいますが、アトピーに良いのでしょうか?」

今までに何度も受けた質問だ。

たくさんの水を飲み、アトピー性皮膚炎を改善しようとしている人は多い。

当然、肌につける水も風呂の水も気を付けている。

アトピー性皮膚炎に良いとされる水はたくさんあるが、私にはどのくらい効果があるのかは分からない。

しかし良い水でも量が過ぎれば身体に問題を起こすことは知っているし、アトピー性皮膚炎の治療の妨げになることも知っている。

水に関係する臓腑は、脾(水分吸収)と肺(脾で吸収した水を全身に行き渡らせる)と腎(使えない水の排出と使える水を再び肺へ送る)だ。

この方は多量に水分を摂取したために入口の脾が弱り、水を効率よく吸収できなくなっている。

身体には吸収しきれなかった水が溢れ、他にも生野菜と果物の摂取が多過ぎ、水余りに拍車を掛けている。

溢れた水は使い物にならず、気や血の流れを妨げまた血を薄め、肌は悲鳴を上げる。

「すでに多量の水が脾に負担を掛けています。脾が健全でなければ、肌は絶対に良くなりません。」

このまま水を飲み続ければ、いずれ肺と腎にも問題が起こり新たな病が現れるだろう。

「でも水の質は大切ですよね?」

もちろんそうだが、普通の水道の水を飲んでもアトピー性皮膚炎にならない人はたくさんいる。

このことをよく考えなければならない。

水の質や塩素を中心に考えていても、肌の負担は減ってもアトピー性皮膚炎の本当の治療にはならない。

最も良い水分は食材に含まれる水分で、調理法によっては速やかに津液(最良の水分で血の材料)になる。

飲み物は白湯や薄めのお茶などが良く、胃腸の負担がなく吸収され津液になる。

これらの中からその方にとって必要な食材や飲み物を選択し、適量を摂ることが良い。

良い水分は身近なものから摂取できる。

良い水分は肌を潤してくれるし、血の材料になり血も肌を良くしてくれる。

この水分をスムーズに吸収するのは健全な脾の働きがあるからできることであり、たくさんの水を飲み脾を弱らせることが、アトピー性皮膚炎の治療になるとは考えられない。

脾の働きを元に戻し、溢れた水を取り除くには時間が掛かる。

たくさんの水を飲む方法でどれだけの人が苦しんだことか、どれだけ治療期間が長くなってしまったことか。

少し荒っぽい文章になってしまったが、大変な思いをしている方たちを見ていると、どうしてもこのように考えてしまう。