全身の肌が乾燥し黒っぽい、顔が焙られたように赤く腫れる、首から上が熱い、苔癬化、オ斑、指の潰瘍性のひび割れ、唇の乾燥・ひび割れ、髪の乾燥、
痒みで目が覚める、寝汗をかく、背中や脇腹が張る、便秘、小水の回数が少なく色が濃い、食べても太れない、
不眠、夢が多い、だるい、すぐに疲れる、頭痛、耳鳴り、口が渇く、関節の動きが硬い、膝がミシミシ音がする、
まず始めにご本人が話された症状だ。20歳代の女性である。
「子供の頃から身体が弱くずっとアトピーで、食べ物・飲み物・シャンプー・石鹸・化粧品・下着など本当に気を付けていました。
保湿剤や漢方薬も試したけど、結局ステロイドから離れられず、怖いから少なくしたりやめるとひどくなって、また使うと良くなるけど、やっぱりステロイドが怖いからやめるとまたひどくなって・・・。
人の目が気になって、会社以外はどこにも出掛けません。
あの、私、結婚したいし赤ちゃん生みたいです。でも生まれた赤ちゃんもアトピーだったらどうしようと考えてしまって・・・。
今までもこれからもアトピーに振り回されると思うと嫌なんです。とにかくアトピーが嫌で嫌で、もう本当に嫌なんです。」
アトピー性皮膚炎は本当につらい病だと思い知らされる瞬間だ。
脈診の結果は陰虚。
アトピー性皮膚炎を中心とするたくさんの症状の根本原因は陰虚にある。
肌だけを診て身体の中で起きている陰虚を見逃してしまったため、身体の隅々までアトピー性皮膚炎に苦しめられることになった。
この方のアトピー性皮膚炎を治すには、しっかり眠れる心身をつくることだ。
それが陰虚の治療になる。
陰虚は、津液という有益な水の不足を基に発生する。慢性化すると、火を消す水が無いのと同じように熱が暴れだし、その熱が風を生み、全身を熱い風が襲うのだ。
肌は激しく乾き、上昇する性質のある熱は、身体の上部に位置する顔を激しく焙り赤くする。風は強い痒みを起こす。
しかし水が足りないからといって、ただ水を飲めばいいのではない。この方の臓腑の質と陰虚というものを考え、飲食する物を選び水分を摂らなくては、新たに病を生んでしまう。
良い水分を摂り続ければ肌とその他の症状は落ち着き始め、やがて眠れるようになる。しっかり眠ることができれば、眠っている間に津液は充実し陰虚から脱することができる。
治療は水分をしっかり吸収できる身体にし、津液を補うことに徹すればよい。
これがこの方のアトピー性皮膚炎の診断と治療である。
「何となく分かった気がします。それに私がやらないといけないことがハッキリしたので良かったです。」
津液で心身を潤わせ、ゆっくり眠ることができれば良くなる。肌が良くなるころには虚弱な体質は消え、心身ともに健やかな女性になっているはずだ。
そして陰虚の改善は、健康な赤ちゃんを生む身体をつくってくれる。