アトピーを肌の病と考えると治療が難しくなる

「私は統合医療を行なっている医師だが、あなたはアトピー性皮膚炎をどのように考えて治療しているか?」

匿名で電話があった。

「アトピー性皮膚炎を皮膚病と考えてはいけません。内なるものは必ず外に現れるという東洋医学の基本通り、アトピー性皮膚炎は身体の中の問題が外(肌)に現れたものと考えています。」    

以前にも統合失調症について似た質問を受けたことがある。

「病院で処方された漢方薬を半年近く飲んでいますが経過がよくありません。食事の指導も受けていて、食べる量も減らしているのですが・・・」

20歳代のアトピー性皮膚炎の女性に処方されていたのは脾胃湿熱に対する漢方薬。

肌は赤く熱感があり痒みが激しく、掻いたところはびらんを起こし浸出液でジュクジュクし血も混ざっている。

びらんが目立つのでつい脾胃湿熱と考えてしまうが、頚や体幹には肝特有の症状がある。

脈を診ると肝に熱があり、湿はひどくない。証は肝気犯脾。この方のアトピー性皮膚炎は湿熱が原因ではない。

ストレスや忙しさから肝に強い熱が現れ、その熱が脾(消化器)に入り込んだために消化能力が低下し湿(未消化物)が生じている。

湿が肝の熱によって表面に押し出され、びらんを起こしジュクジュクしているのだ。

肝の熱が根本原因で、二次的に湿が現れている。

治療は肝の熱を取り除くことを第一にすると、脾に入った熱はなくなり湿も消える。

湿の治療は補助的に行なえばよく、この方の肝気犯脾に対して湿熱の漢方薬では良くならない。

東洋医学で治療しようとしたら皮膚の見た目で判断するのではなく、東洋医学の診断法(脈診)が必要である。

「西洋医学の病名や所見・数値から漢方薬の処方はできないか?」という質問には、できないし絶対にやってはいけないと答えた。

アトピー性皮膚炎を肌の病と考えてしまうと東洋医学の治療は難しくなる、と言うよりできない。